クリスマスの夜





シラバブは、白い便箋にペンを走らせた。
可愛い、女の子らしい字で、手紙を書いている。
一生懸命、考えて、悩んだ末の文面。
欲しいものだって、すごく、すごく悩んだ。


「シラバブ、なにお願いするの?」


隣に座っていたミストが、本から顔を上げて聞いた。
シラバブが書いているのは、サンタクロースへの手紙。


「あのね、ないしょ!」
「ないしょなの?」
「うん、サンタさんだけに言うって決めたの」


ミストは嬉しそうに笑うシラバブを見て、
そうなの、とだけ言って、また本に視線を落とした。
確か、去年のシラバブのクリスマスプレゼントは、
パンダのぬいぐるみのクリスマスバージョン。
その前は、パンダのぬいぐるみの小さいやつを3つ。
その前の前も、その前の前の前も、
パンダのような気がしてならない。
ミストは本に視線を向けていながらも、
そんなことを考えていた。


「ねぇミスト。ミストのところは?」
「なに?」
「ミストのところ、何色のサンタさんが来る?」
「な・何色?ってどういうこと・・・?」


サンタっていうもんは、赤と白で統一されていなかったか?
ミストがぐるぐると頭を抱える。


ミストは、サンタなどいないと知っていた。
だが、これはさすがにシラバブには言えない。
ミストにサンタのふりをしてプレゼントをおいてくれるのは、
タガーだ。
きっとシラバブのところは、マンカスだろう。


「あのね、にーやんが、サンタにはいっぱい色があるんだって」
「言ってたの?」
「うん。言ってた。うちには黒と白のしましまのサンタが来るの!」


ニッコリとシラバブが笑う。
そうか。マンカスは、もし見られても自分だというのを
誤魔化せる方法をソレにしたのだ。
さすがマンカス考えたもんだな、とミストは思い、
自分の時のコトを思い返していた。


タガーなんて、自分が信じていた頃はなんとか頑張ってたけど、
僕が「サンタはいないの?」って聞いたら、
もー焦ってどもって。
「いいいい・い・いる!ぜってぇーいるって!」
とかってさ。あ、いないんだって思っちゃったよ、もう。


シラバブは手紙を書き終えたようで、
ペンを置いてそそくさと郵便ポストに入れた。
あそこに入れると返事がくる、と言っていた。
マンカスは、まめに返事まで書いてよこすのだそうだ。



そして、聖夜。クリスマス・イブ。




マンカスは、郵便ポストからシラバブの手紙を取り出す。
それを見るだけで、マンカスは頬が緩んだが、
中身を読んだら、そうはいかなくなった。
彼の顔はサッと青ざめ、額に汗がじんわりと浮かぶ。


手紙の内容は、こうだ。


バブのおうちにくる、しましまサンタさんへ。
ことしのクリスマスはパンダの大きなぬいぐるみが
ほしいです。


ここまでは、毎年のクリスマスと
同じような内容だった。マンカスもニコニコしていた。
問題は、次だ。


でもね、もうひとつあるの。
ことしはしましまじゃなくて、オレンジいろの
かわいいサンタさんにきてほしいな。
バブしましまよりオレンジがすきなの!
おねがいします。  シラバブ


しましまよりオレンジ。
自分より他、ということか・・・!?と、
マンカスは青ざめていたのだ。
オレンジといえば、
ジェニおばさんかジェミマだ。
ジェニおばさんはクリスマスになると、
なにやら忙しそうなので、
マンカスはしぶしぶ、ジェミマを当たってみることにした。




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