ジェミマの家には、雌猫たちが集まって、
クリスマスパーティーの準備をしていた。
ジェリロがケーキを焼き、ごちそうを作っている。
リーナは背が高いせいか、飾りを壁に貼り付けている。
ディミとジェミマが飾りを作っている。
ヴィクは音楽を選び、タントがジェリロのそばで食器を洗っていた。
カッサがいなかったが、彼女はきっとタンブルと２人だ。
「あらマンカスどうしたの？暗い顔しちゃって」
声をかけてきたのはディミだった。
その声にみんながいっせいに暗いオーラを纏った、
マンカスに目を向けた。
ジェリロが料理の手を止めて、目を見開いている。
「この時間って、いつもバブのクリスマスプレゼントを買ってる
時間じゃない？どうしたの？今年こそバレちゃったのしましまサンタ！」
「し・しましまサンタ！？」
ディミータとジェミマが声を揃えて、
その名称に驚いていた。
声を合わせて復唱したあと、２匹は転げ回って笑った。
「し・しましま・・・！！アーッハハハハ！！」
「静かになさいよ、で、マンカスどうしたの」
笑い転げる２匹を止めて、口を挟んだのはリーナ。
口元は微かに笑っていたが、
マンカスはショックのせいかそれさえも気にならなかった。
「バブが・・・しましまよりオレンジが、好きらしくて」
「うん、それで？」
いままで黙っていたタントが、先を促した。
「今年は・・・しましまサンタじゃなくて、オレンジサンタがいいらしい」
「・・・・・・あんた、ややこしいこと教えたわねぇ」
リーナが呆れた顔でマンカスを見ている。
マンカスの首は、がっくりとうなだれている。
「それで、どうしてここに来たの？」
ヴィクが神秘的な笑みでそう言った。
マンカスはジェミマを見やり、ハァ、とため息をつく。
「ジェミマに頼もうかと、思って・・・」
「あ・あたしぃー！？」
ジェミマは驚いて自分を指さしていた。
ジェリロがあぁと頷き、ジェミマに行ってあげなさいなと言った。
「この辺じゃあ、オレンジってったらあんたかジェニーじゃない」
「ジェニおばさんじゃ駄目なの！？」
「彼女、ゴキブリとネズミとクリスマスパーティーをやるのよ」
「あたしたちだって・・・！」
「お料理はのけといてあげるわよ、ね？」
ジェミマは、ジェリロの説得に圧迫され、
しぶしぶながらも縦に首を振った。
マンカスはそれでもやはりショックからは抜け出せず、
肩を落としたまま、じゃあパンダ買ってくる、
と言い残して去っていった。
「・・・悲しい男の背中ね」
「普段から大変だもの、彼」
「そうねー、あんな性格になるのも、理解できるわ」
そんな、乙女たちの呟きがあった。
マンカスは、大きなパンダのぬいぐるみを買ってくると、
ジェミマに渡し、彼女はマンカスと教会へ向かった。
はじめは渋っていたジェミマだったが、
ふわふわのサンタクロースの衣装を着た途端、
ルンルンと足取りが軽かった。
「さ！枕元においてくればいいのね！」
「あぁ、バレないように、してくれ」
「うん、わーかってるって！」
ジェミマはピョンピョンとスキップでシラバブの部屋に入った。
すぐ出てきて、ニコリと笑って手でマルを作った。
マンカスは少し安心して、顔がいつも通りになった。
無事、クリスマスイブの夜は、終わりを告げた。
次の日のシラバブの反応が楽しみだった。
翌日。朝は綺麗に晴れた。
朝食を作り終えたマンカスは、
シラバブが笑顔で起きてくるのを心待ちにしていた。
シラバブが走ってくる音が聞こえて、
マンカスは手を止めた。
「にーやん・・・」
「バブ、サンタさん、オレンジだったろ？」
「うん。でも・・・」
「どうした？」
「バブ、前のサンタさんの方がいい」
マンカスは、その言葉を聞いて嬉しくならずには
いられなかった。
「な・なんでしましまサンタさんの方がいいんだ？」
「だって、オレンジサンタさん・・・おでこにキスしてくれなかった」
「そうか・・・」
「しましまサンタさんみたいに、お返事もくれないし」
「あ・・・」
マンカスは、彼女への返事を書くのを
すっかり忘れていた。
いつもなら、プレゼントと一緒に付けてあげるのに。
まあ、それも良い方に転んだらしいから、いいとしよう。
マンカスは、バブの前で膝を折って座り、
彼女の頭に手を置いた。
「バブはイイ子だから、きっとシマシマサンタさんから
お返事が来るよ」
「そうかなぁ？」
「うん。オレンジサンタさんは、人気者だからね。忘れちゃってたんだ」
「そっかな」
「そうだ」
「そっか！うん、サンタさんにお礼言わなきゃ！
パンダありがとうございましたって！」
マンカスとバブは、にっこりと笑いあって、
朝食を食べた。
マンカスは、しましまサンタとして、
彼女にお返事を書いた。
きっと愛情たっぷり。
そんな、クリスマス。
ＦＩＮ
