あのころ 緑がゆらゆらと揺れていた。 木の上では風が通り抜け、毛をなびかせた。 隣で寝ている幼なじみは 今にも転げ落ちそうだ。 派手な毛皮を首周りにまとい、 可愛い子は次々と、こいつの虜になる。 いつも同年代の雄猫たちが愚痴るのは、 こいつのこと。 彼女をとられただの、 好きな子はアイツにメロメロだだの。 だが、彼らは、アイツなら諦めるしかないな、 とため息をつく。 でも、俺にはわからない。 こいつのどこがいいんだろう。 「おい。起きろタガー」 「ん〜〜〜」 生返事で、起きる気はないらしい。 このまま、木から落としたら どんな格好で落ちるだろう。 どんな顔をするだろう。 そんな興味本位で、 トン、と押してみた、 タガーの横腹。 ズルと身体全体で滑る。 ディズニーアニメのように、 一瞬なにもないところで浮く。 そして、大きな音をたてて 彼は落ちた。 「って・・・!!」 「あ、ほんとに落ちた」 痛みにのたうちまわるタガーを見て、 少し笑った。 「ったりめーだろーがよ!!」 「いや、ごめん」 「ごめんじゃねー!イッテーーー!」 目の端に涙を浮かべて、 丸くなる彼。 なんだか、思ったよりも普通で、 呆気にとられてしまった。 「なんだ。普通だな」 俺がボソッと言うと、 タガーは目を見開いてこちらを見ていた。 すると、ささっと立って、 土のついた尻をパンパンとはたいた。 「俺が普通じゃないと思ってたのか?」 「や、別に。」 「・・・俺は気まぐれラム・タム・タガーだぜっ!!」 タガーは格好をつけながら、 素早い動きでまた、 木に昇ってきた。 「もっとも、お前はすっげぇ普通だよな」 「・・・そうか?」 「おう!ものすっげ〜普通!!平凡!」 「だまれオチャラケ猫め」 「おやおやおや〜?そんなこと言っていいのかい?」 「は!?」 タガーのニヤリと笑った顔を、 不審に思ったのはその後だ。 ドンとタガーは俺の胸を押し、 ぐらりと傾いた身体。 さっきのタガーのように、 落ちる・・・!! 「うっ・・わ!!」 太い枝から、足が滑った、その時。 タガーが俺の手首を掴み、 足をはらった。 そのまま垂直に落ちると、 そこは木の枝の上。 「・・・・・・あれ?」 「ばーか!ビビってやんの!ダセー!!」 「うるさい!死ぬかと思った!」 「俺は落ちたぞ!?」 「お前は死なないだろ、ゴキブリ猫!」 「ムキャーー!今度は落としてやる!」 いつからアイツと一緒にいただろうか いつまでアイツを一緒にいるだろうか まだ 離れるわけにはいかなさそうだ。
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